七瀬真琴『JC』
「エロ漫画はお勧めを選ぶのが難しい」という現実を十分踏まえた上で、僕はレビューをしてお勧めする側に一応居るわけです。その難しさを身をもって経験しているからこそ、人に作品を勧めて頂くと一層嬉しいものなのです。どんなジャンルでも愛せる自分の節操の無さが、そういった時には役立っているなぁと感じます。
なお、本レビューは予約投稿です。今頃管理人は新木場でヘドバンしまくっているはずです(笑。
そんなわけで、結構遅延レビューになりますが七瀬真琴先生の『JC』(富士美出版)のへたレビューをば。
乾いた現実感の中で無思慮な悪意と殺伐とした性交が描かれるダウナー系の作品集です。
収録作は、痴漢容疑者捏造ゲームに興じる女子中○生コンビ(←参照 前編より)への被害者の報復を描く「GAME OVER」前後編、喫煙・飲酒をネタに性行為を強要される野球部員とその女友達を描く「MIX JUICE」前後編、万引き少女コンビが変態店長に捕まって…な「LIAR GAME」前後編、および短編5作+あとがき4コマとなっています。1作当りのページ数は全て16P。前後編でちょうどいい分量です。ただ、短さ故のシナリオ分量の少なさが、後述するドライな悲劇を逆に演出していたようにも感じました。
(推定)叔父と姪のコミカルエッチな「しあわせプリン」と罰ゲームで露出エッチinプリクラマシーンな「CHIEN RACE」を除けば、女子中○生メインの貧乳少女達が陵辱されるお話のみです。
ヒロイン達はその幼い悪意の赴くままに社会のルールを破り、他人に迷惑・損害を与えます。その無邪気な、されどそれ故に酷い悪行に対してあまりに痛烈なしっぺ返しを受けながら、彼女たちの更正も逆転勝利も描かれません。
このため、勧善懲悪のカタルシスも、奔放に悪を貫き通す痛快さも共に作品中にはありません。
あるのは「現実的な悪人」と「愚かな少年少女」が織り成すリアルな地獄絵図の絶望感と後味の悪さのみです(←参照 兄が錯乱して妹を絞殺するラスト 短編「不協和音」より)。また、作中のセックスに対する敷居の低さも特徴で、それは罰ゲームでの特殊プレイという「CHIKEN RACE」にも共通しています。
各作品での性行為は、歪んだ大人が強要する生々しい苦痛に満ちた陵辱か、少女達が相手を丸めこむための幼い狡知の一環のどちらかであり、粘膜を通して互いのエゴと嫌悪感を擦り付け合うような行為です。
互いのよき心が通い合う純愛ラブラブHとはかけ離れたエロシーンですので苦手な方はご注意下さい(←参照 「LIAR GAME」後編より)。十分ベテランの域になる七瀬先生ですが、はっきり言って作画能力は高くありません。苦痛に歪むヒロインズの表情や、時に心中の諦観や絶望を汲み取らせる表情など単品では悪くない部分も多いものの、変化に乏しく場面場面を盛り上げられない表情の描写力は個人的にはマイナス評価。
のっぺりとした貧相な肢体は現実的ではあり作風にもマッチしていますが、やや華に欠け直接的なアピール力に欠けるのは事実で万人向けとは言い難いです。個人的には美味しく実用的読書を楽しませて頂きましたが(笑。
正直僕はよく知らない分野ではありますが、女子中学生の今風のファッションを描いているのは大変よい味付けになっていました(←参照 手に持っている飲料にも注目のこと 短編「路地裏の捨て猫たち」より)。僕はオイスター先生や氏賀Y太先生の作品が大好きです。何回でも繰り返して言いますが、両先生の描く残酷で反社会的な地獄絵図は『悪徳を悪徳として楽しむ』ものです。嫌悪感を発生させるだけの装置でもなければ、逆に悪徳から美徳へと昇華されて崇めたてられるものでは決してないと個人的には思います。
その意味で、ドラマ性や”華々しい”表現を排した本作は『楽しむ』ものではあまりありません。
極悪人も常軌を逸した狂人も悪の組織も登場せず、圧倒的な暴力描写も残酷描写も、思い切って言えば深い絶望や懺悔も描かれません。だからこその悲劇なのです。
無関心とエゴが踏みにじる性と生の尊厳、それすら「消費」する読み手の本質的な残酷さの両方を踏まえずにどうして鬼畜・陵辱エロが語れるでしょうか?
閑話休題。いわばヒロイン達の身の丈に合った、それ故に過酷な惨劇を描く作品です。救い何ぞ一切御座いませんので、後味の悪さをむしろ味わってみたいという剛の者な方以外には勧めがたし。
作劇に関して多少不満は残りますが、結構印象的な作品でした。
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