木村屋いづみ『少女風景』
大層なことを言ったくせに、レビューがなかなか改善できない…。やっぱり文章は短くした方いいと思うんですが、好きな作品ほど長く書き連ねたいことが多くなってしまいます。本当にどうしたもんやら…。
本日は木村屋いづみ先生の『少女風景−スカートの中の願望−』(三和出版)の感想です。好きな作品なんで文章が長くなりそうだなぁ(溜息
百合系統の作品に強いベテランの先生ですが、結構寡作の様です。もしかして一時期改名されていたりするのでしょうか?すいません、寡聞にして知りません。
収録作は、元気印な日焼け少女と大人しい色白少女(表紙の二人です)、そしてその二人の秘密を握った男性の3人の関係を描く「彼女2分のイチ」シリーズ全4話、自分の痴態を他人に見られたいという願望を持つ少女を描く「少女風景」全2話、および短編6作となっています。
カラーが入った作品を除けば1作(1話)あたりのページ数は16〜20Pで、ちょっと短め。
『少女風景』というタイトルを冠しているだけあって、物語の主役はあくまでミドル〜ハイティーンの少女たちです。
幽霊の少女と目立たない少年の恋愛話(←参照)を描いた短編「僕の彼女奇譚」を除けば、男性が確固たる存在感を持つ人間として描写されることはありません(一応短編「僕の先生」には男キャラがが描かれますが存在感は非常に希薄)。男性は心情の描写はされ、性行為において男性器のみ登場しますが、男の姿が少女たちを描くコマの中に登場することはほとんどないのです。
誤解を恐れずに言うのならば、男性がいくら少女たちに心を動かしされ、彼女らに性的快楽を与えようとも、「少女たちの世界(風景)には決して踏み込めない」という、読み手にとってはある意味絶望的なテーマ性が感じられます。
二次元美少女との甘くてイチャイチャなハッピーラブ話を求めて購入すると痛い目に合うことになるので注意しましょう。
ドス黒い悲劇と美しい夕焼けの光景、その両方に身を染める二人の少女の対比(←参照)が心に突き刺さる、まごうことなき極上の悲劇「あの空の向こう側」のような作品もあれば、高らかに愛と生の賛歌を歌い上げ爽やかなハッピーエンドを迎える「僕の彼女奇譚」、性感を求める少女たちの業を描くダークな作品「密室のアイドル」「クラス写真の彼女」など作風はバラエティに富んでいます。素直なハッピーエンドもありますが、どちらかというと一見明るく幸せそうながら、悲劇の暗闇が見え隠れするラストが多めです。「あの空の向こう側」なんてラストのコマの後には最悪のオチしか考えられませんよ。
そんな作品群の中で「彼女2分のイチ」シリーズが個人的には白眉の出来です。
主人公の男の子は、陸上部の天真爛漫少女、千奈子ちゃん(←参照 褐色肌少女万歳)が清楚な美少女、深森さんの机で自慰をしているところを目撃し、それをネタにして千奈子ちゃんを性玩具として扱います。ここだけだと鬼畜一直線ですがそうではなく、千奈子ちゃんはそんな男の行為を笑顔で受け入れ、その眩しい程の素直さに男は恋愛感情を抱きます。
しかしながら、あくまで彼女の心の中にあるのは深森さんのみ。千奈子を自分だけのものにしようと画策するも、彼の試みは優しく、そしてそれゆえ一層残酷に撥ね退けられます。
手
を重ね幸福そうな二人の笑顔(←参照)は、結局何も手に入れられなかった男との比較で胸にチクリときます。男の独占欲はごくごく自然な感情であるだけに、本当に強烈ですよ。実に無邪気な台詞による追い討ちすらあります。因みにタイトルが巧いんですよ。時系列で言えば、「彼女2分のイチ」→「彼女2分のイチ+2分のイチ」→「彼女2分の弐」→「彼女2分のイチの2千ジョウ」なのですが、「彼女」は決して「1」にならず最後のタイトルでは「ほとんどゼロ」になってしまっているという何とも哀しい流れになっています。
エロに関しては「男女の交わり」としてセックスが描かれることは無く「弄ばれる少女」「性に耽溺する少女」などあくまで女性が主となるものです。百合展開もアリ(「少女風景」後編)。
性の生々しさなどの現実感が希薄なこと、性器描写が非常に貧弱なことなどから実用性は平均すると低め。ただ、「少女風景」や「クラス写真の彼女」にて少女が妄想するリンカーン行為はなかなか実用度高いです。
また、初出は2006年から2008年のもので絵柄は安定。表紙絵で判断して全く問題ないです。女流らしい細い描線で表現される透明感のある絵柄は実にグー。
大人でも子供でもない少女という存在は不可思議なものです。時に恐ろしく強く、時に哀しいほど儚い。時に性を支配し享受しながら、時に性に飲み込まれ支配される。美しくも醜くもある。
ある意味男性には踏み込めない、不思議な風景を見ている存在としての少女を描く秀作と感じました。
安易に「コレ面白いよ!」と勧められる作品ではないですが、少女たちが紡ぐ世界を垣間見たい貴殿には是非お勧めしたい作品です。
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