尾野けぬじ『ラブでれ』
雪柳が散ってしまったので、今は鉢植えの桜(まだ2分咲きくらいですが)を愛でつつ朧月見&花見酒。大樹の桜も格別ですが、鉢植えの桜も可愛らしく、風情があります。前回、前々回が遅延レビューでしたので今回はちょっとだけ先走って尾野けぬじ先生の『ラブでれ』のレビューです。25日発売作品の中では一押しです。
収録作は、超少子化社会の未来、義務である「実習」としてセックスをする生徒たちの恋愛模様を描く中編「それでも僕らは」全4話、「セックス」を学びに来た異性人のお姫様とお付の女性騎士と実地体験学習な「宇宙こんにちわ」前後編、ざっくばらんな付き合いをしていた男女が恋人へと仲を発展させる連作「トモダチ以上」「コイビト未満」、他短編3作となっています。
上記以外に、伸長が急に伸びたり縮んだりする主人公が登場する短編「どっちでもいーや」など、SF(少し不思議)な設定を盛り込むことも多いですが、その作風は一貫して「愛、およびその発露としてのセックスへの賛歌」です。
その作風を如実に表現しているのが「それでも僕らは」です。作中での性行為は、謂わば義務として半強制的に行われていますし、一学生である彼ら彼女らはそれを当然のものとして受け入れますし、受け入れざるをえないのです。
「うはー、羨ましい」と思うかもしれませんが、好きでもない相手と抱いたり抱かれたりというのは決して快いものではないということにもしっかり踏み込んで描かれます。この作品には3人のヒロインが登場しますが、同一の男性に対し3者3様の恋心を抱き、そして主人公と結ばれます。
破滅の香りがかすかに漂い、性行為の義務化という(我々の観点からすれば)異常な規範を持つ環境において、「それでも僕らは」恋をし、心と体を一つにするセックスをし、そして子供をつくるという、実に率直ながら力強くかつ暖かい主張は感動的ですらあります。セックスは愛故の行為であり、その愛が子供(家庭)を為す根底だというテーマが感じ取れ(←参照)、これを一切の照れ無くエロ漫画で堂々とやってのけたことを高く評価したいです。
表紙絵は彩色のせいか、ちょっとクセが感じられますが、中身ではスッキリとした線ながら女性の華やかさが嫌味なく描かれた万人受けする絵柄です。
エロスや萌えという観点からするとちょいと物足りない印象はありますが、その素朴ともいえる画風は率直な愛と性愛の賛歌である作風に非常にマッチしています。絵柄からすると、尾野先生は女性の方なのでしょうか?
また、コミカルな場面やシリアスな場面、そしてHシーンにおいて喜怒哀楽、照れそして快感といった様々な表情が活き活きと描かれており、キャラクターへの愛着を増してくれます。
以前も言いましたが、僕は褐色肌銀髪というキャラに物凄く弱いのですが、「宇宙こんにちわ」に登場のリディアさんが大好き。
真面目でプライドの高い彼女が、初めて経験するHで主人公にリードされ、未知の快感に不安になり、涙目で従順になってしまうシーンは大変微笑ましく大好きな一コマです(←参照)。他の作品では目立ちませんが、ロリなお姫様と筋肉が発達しながらスラリとした女騎士リディアさんの体型の描き分け方も非常に上手です。
当然ながら、HシーンはラブラブHのみです。
互いの愛情を確かめ合うようなHは、互いの体温が感じ取れるような暖かいものであり、女性側も愛故の快感を十分に味わいます。
Hシーンにおける女性側の幸福感に満ちた表情は実に素晴らしく(←参照)、恋愛モノ好きには至高の一品と言えましょう。激しいHを求める方には不向きですが、多幸感に溢れ、雰囲気のあるラブラブHというのは意外にも実用性は低くないと個人的には思います。
「それでも僕らは」のラストは、一体3人の内誰を選ぶのかと僕はドキマギしたのですが、少子化社会故に重婚OKというオチでむしろ嬉しかったです。
これを聞いて「あー、恋愛モノの王道でご都合主義ね」と思うかもしれませんが、決してそれだけではありません。
メイドさんとの恋愛を描いた短編「日常のメイドさん」は、ご都合主義的なハッピーエンドとは正反対な最後ながら、メイドさんの主人公への真摯な愛情をしっかりと感じ取れるラストになっています。
慈しみの表情で主人公を受け入れてくれるメイドさん(←参照)と主人公が最後に決断した、優しく、しかしちょっとだけ悲しいラストを是非お楽しみ下さい。単純な実用性ではやや劣りますが、可愛らしいヒロイン達が紡ぐ愛と性の賛歌を聞きたい貴殿にはお勧めです。
PS.ブログやっていて初めて拍手というのを貰いました。いざ自分が頂く側になると実に嬉しいものですね。拍手くれた人ありがとうです!
コメント
No title
どこかで見たことのある絵柄だと思ったら、景えんじ先生だったんですね。
No title
どうもコメントありがとうです。初めましてですかね?
おっしゃる通り、今単行本は景えんじ先生名義の時の作品と尾野けぬじ先生名義の時の作品が混じっているようです。
素敵な絵柄ですよねぇ。僕は大好きです。
おっしゃる通り、今単行本は景えんじ先生名義の時の作品と尾野けぬじ先生名義の時の作品が混じっているようです。
素敵な絵柄ですよねぇ。僕は大好きです。
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