雨がっぱ少女群『あったかく、して。』
07年12月〜08年3月と短命だった旧ブログから引っ越す際に、質の低い初期のレビューを放棄したのですが、その中に雨がっぱ少女群先生の初単行本のレビューもあり、もう一回書き直したいなぁと思っています。ただ書くのが遅くて新刊レビューで手一杯なんですが(溜息。
というわけで、本日は雨がっぱ少女群先生の2冊目『あったかく、して。』(茜新社)のへたレビューです。初単行本が生んだ期待を全く裏切らない出来でした。
少女性愛および“異形としての少女”達の甘く優しい幻想性と鋭利な現実性の両方を巧みな筆致によって描き上げる作品集です。
収録作は、幽霊になってしまった少女と生前の主治医の男性とが二人きりのラブラブ生活を謳歌している所にエクソシストの少女が現れてひと悶着な中編「パジャマパーティー」全3話(←参照 第1話より)、および短編6作。カバー裏のおまけ4コマとイラストも必見。1作・話当りのページ数は20Por24Pで標準的なボリューム。軽快な読み心地の作品もあれば、大変重い作品もありますが、作画密度の高さやプロットの練り方の巧さが確かな満足感を生み出しています。
作風的には、欲望の暗さや禁忌への怖れといった負の要素をあまり感じさせず、コミカルな味付けをしたり切ない感情を絡めたりする少女達との恋模様を描く作品が大半を占めます。
勿論、コメディの勢いで全て済ませるタイプではなく、中編「パジャマパーティー」の幽霊ヒロインこのみちゃんの一途な愛情の表現、お馬鹿ラブコメ風味の短編「小鳥の縛り」の微笑ましいハッピーエンド(オチ除く)、二人の少女が抱いた恋心の結実と散華を描く短編「AWAKE」の切ない劇終、そして短編「真夜中の妹」の読者の予想の斜め上を行く話の落とし方などなど、それぞれの作品においてヒロイン達とシナリオの魅力を丁寧に引き出す展開が為されています。
短編「太古の森」に代表されるこれらのポジティブな印象が強い作品群に関しては、前単行本の同様の収録作に比べ、明るさ・楽しさの色彩がより分かり易くなった感があります。この事を個々の作風への踏み込みが強くなったと評価するか、ジャンルの不可分性が弱くなったと評価するかは読み手次第かなぁという印象です。
しかし、今単行本で非常に大きな存在感を放っているのが上述の作品群の後にやって来る巻末の短編2作「家庭菜園」と「夕蝉のささやき」です。
父娘相姦さえ除けばありふれている少女の現実的な日常を、他作品と大きく異なる写実的な作画で描き、少女の無邪気で無慈悲な一言(←参照)を介して強固な現実が少女性愛の幻想を真っ向から切り裂く短編「家庭菜園」。後味の悪さを増加させる巧みな終盤展開を魅せ付けながら、辛い現実が産み落とした狂気の幻想が少女の現実を禍々しく蝕む様を描く短編「夕蝉のささやき」。
共にかなりドス黒い要素を含む作品ですので、ハッピーなロリータ幻想を最後まで保ちたい貴兄は回避推奨。
これは例えば幽霊(幻想)と生きている少女(現実)の癒合と乖離をビジュアル的に表現した「パジャマパーティー」などでも同様なのですが、特にこのダークな2作では作中での幻想性と現実性、および読み手の持つ幻想感と現実感が互いに絡み合いせめぎ合うチリチリしたテンションが素晴らしく、作品に奥行を与えています。
短編「太古の森」の大仰な心象風景の表現や短編「夕蝉のささやき」の狂気の演出(←参照)など、インパクトを優先し過ぎることが鼻につく方もいると思いますが(個人的にはある程度共感できます)、決して奇抜さや狂気性を垂れ流すために作品を描いているのではなく、我々が全容を掴み得ない“少女”達の物語として描くために奇抜さや狂気を用いる姿勢は実に真摯で筋が通っていると個人的には思います。上述の短編「家庭菜園」では作品の方向性に合わせて大きく絵柄を変更していますが、その他の作品でも場面場面の雰囲気に合わせてタッチをナチュラルに変化させています。
一桁〜ローティーン(ギリギリ二桁クラスがメイン)の幼〜少女達はほっそりとした写実的な肢体にほんのりと丸みと柔らかさの質感を添加した独特の絵柄で描かれます。
少女達の可愛らしさと時々の不気味さの表現も大変良いですが、同時に丁寧に描かれる背景も素晴らしく個々のコマの情報密度を大きく高めています。
「パジャマパーティー」第2話での処女喪失のシーンでの花壇、短編「太古の森」での現実のドライさや冷たさの側面を体現するかのようなコンクリートジャングルなど登場人物達の心情や行動、作品の雰囲気をしっかりマッチしている背景は作品の魅力を大きく高めていました。
とまぁ、ここまで少女性愛の幻想と現実がどーのこーのみたいな偉そうなことを書いておいてこんな事を書くのは御不快かもしれませんが、今単行本は前単行本以上にしっかり抜けます。
エロシーンにおいてすらテーマ性やカテゴライズ不能な雰囲気が色濃く漂っていた前単行本に比べると、エロシーンはエロシーンとして扇情的に魅せようという意欲が感じ取れて個人的には好印象。
低い頻度で挿入される性器アップや断面図のエロティックさの不足はやや難ですが、雨がっぱ先生にしてはテンションの高いエロ台詞なども時に絡めつつ、貧相な少女の肢体をティンコで優しくも激しく突く抽挿シーン(←参照 短編「夕蝉のささやき」より)は(性的な意味で)結構美味しいと感じます。多くの作品で大ゴマ〜1Pフルで中出しフィニッシュをある程度の迫力を以て描くのは嬉しい所ですが、白濁液の勢いに関しては抑え気味でありイマイチ射精の爽快さは味わえないなぁという感想です。
ともかく、絵柄がご嗜好に合ってロリ属性をお持ちであれば実用性は保証されてますので、「作品として味わう前に抜けなければエロ漫画として味わえない」という貴兄も安心して今単行本に挑戦されてみたし。
初単行本の時点で既にオリジナリティー豊かな作家性をお持ちでしたが、それ以降も貪欲に新味を取り込もうとする姿勢がしっかりと伺える内容で、読者の信頼感につながる2冊目だったなという印象を持ちました。
作家性の強さはアクの強さでもあり、ガチロリ物件でもあるので万人向けでは決してないのですが、ポジティブ系もダーク系も味わい深い作品が多いのでエロ漫画好きにはお勧めしておきたい1作です。
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