八的暁『少女嗜好』
今回の狂乱家族日記は久しぶりにシリアス抜きで気楽に楽しめる回で良かったです。凶華様のサンタコスチュー大変美しゅうございました。あと、あの必殺の構えによる攻撃は何人たりともかわせまい、愛らし過ぎて。
さて本日は、八的暁先生の『少女嗜好』(茜新社)の遅延へたレビューです。自分の中で上手く咀嚼がなかなか出来ず、大分難産のレビューになってしまいました。
美しく官能的に描かれる少女達の幸せへの思いを、静寂さすら感じるドラマ表現で描き出す作品集と感じました。
収録作は、肉の交わりに夢中な兄に愛情を受け止めて貰えず寂しい思いを抱える妹の姿がズキリと読み手の胸を痛める「セーラー服とアリス」+同じ兄妹が登場するフルカラー短編「縄と少女(ありす)」、および短編11作。
上述のフルカラーショート作品(4P)を除き、1作当りのページ数は3〜28P(平均19P弱、大半は20P作品)と標準よりちょっと少ない程度。
ページ数は多くはありませんが、各シーン・各コマに込められた思いの密度が高いため、読み応えもありますし読後の余韻が長く続く印象があります。
個人的には大ハマりながら(八的先生自ら書かれているように)現在のエロ漫画業界では異端に近い本格スペースオペラエロ漫画という異色作「愛はさだめ、さだめは・・・」(←参照)もありますが、その他の作品はどこか乾いた現実感の中で様々な形での男性と少女の思いの交錯を描きます。それは短編「HENTAIでイこう!」のように純然たる肉欲の乱れ咲きの形をとることもあれば、「セーラー服とアリス」で描かれるように愛情のすれ違いの悲しさを生み出すこともあり、そして短編「あまり2」や「星盗人」のように想いが素敵に結実する場合もあります。
「愛はさだめ、さだめは・・・」は例外ですが、ドラマチックな展開や雄弁に心情や背景を語るセリフ回しはほとんど無く、漫画的な派手さには欠けています。
エロシーンも含め表情変化はかなり抑えられていますが(←参照 短編「あまり2」より)、その微妙な変化とやはり控えめで味わい深い台詞とで少女達の胸の内の恋心や悲しみ、戸惑い、そして心と体の快楽をじんわりと伝達するタイプです。このため、テンションの高い楽しいラブコメやヒロインの力強い愛の告白が全てを決する直球勝負な純愛劇を期待していると消化不良感を覚える可能性があります。逆に、時に寂寥感を時にささやかな幸福感を醸し出す、味わい深い想いの空間をじっくりと味わいたい貴兄にはお勧めですよ。
これは個人的な妄想なのですが、八的先生は登場人物達の豊かな感情を見世物に貶めず、彼ら彼女らの大切なモノとしてその身の中に大切に閉じ込めている様な印象を受けます。
兄妹のちょっぴり切ないながら超素敵なラストを迎える短編「星盗人」は、恋すれど結ばれてはいけない妹を“届かぬ星”と思っていた兄が、自分もまた妹にとって“空の星”であったことを知り、それ故に結ばれる流れになっています(←参照 いいラストですなぁ 短編「星盗人」より)。読み手にとってはその二人が手の届かない星であることに変わらないのですが、他意無く自身のために身を燃やす星だからこそ、その姿が美しく見えるように思うのです。
「愛はさだめ、さだめは・・・」ではシミュラークルという人造生命体と主人公の男性との、一方では愛の営みを一方では殺し合いを描きます。数多輝く星から思い入れのある星を見出すのと同様、その差異を作り出すのは(作られた≒描かれた)少女への愛があるか否かなのかなと思います。
そういった意味では八的先生の、自身が描いた少女たちへの愛情が込められている作品集だなぁと思います。
エロシーンの作画力は非常に高く、行為の激しさを表現する巧みなコマ展開や構図が光ると共に、一瞬の静寂のシーンを写し出す大ゴマの官能美(←参照 短編「WET×少女」より)も非常に魅力的。無音劇の短編「Silent 2」が代表的ですが、少女の切なそうな表情や液汁に塗れる少女の肢体のシズル感でエロスを確保する類のエロシーンであり、性器ドアップ・断面図といった直接的エロや派手な絶叫系エロ台詞を期待するのは大NG。
白濁液の量は現実的なものであり、デフォルトの中出しフィニッシュの射精的な爽快感はあまりないですが、膣から漏れだす精液の生々しさにはゾクリとさせられます。
非常に官能的な絵柄・エロ展開ではありますが、サクサク抜きに使えるタイプでは決してなく、実用性は人によって大きく異なるだろうなぁと思いました。
全体的に良い意味での停滞感・寂寥感のある雰囲気が非常に魅力であり、何回も読み返して少女達の胸の内の心情に思いを馳せるのも労力は必要ですが楽しいです。
レビューが遅延した理由でもあるのですが、読み手によって色々と解釈できるしすることに意味があるであろう作品なので興味がある人は是非購読してみて頂きたい作品です。
コメント
コメントの投稿



