井上よしひさ『Escape Creator』
昼休みに喫煙所で一服していたら、結構近くに落雷する瞬間を目撃しました。閃光が走った直後に爆音でしたよ。今更ながら自然の力って凄いなぁと思った次第。
さて本日は、井上よしひさ先生の『Escape Creator』(ヒット出版社)のへたレビューです。緊縛モノに関して言えば、井上先生は抜群のセンスの持ち主ですなぁ。
綿密なエロシーンの構成と該博な知識によって描き出される緊縛の圧倒的な官能を是非ご賞味あれ。
収録作は、前単行本にも登場した縄師の少年縄原君がヒロイン達を緊縛調教なシリーズ作(?)4作+短編4作。
1作当りのページ数は16〜32Pと幅があり、平均24P弱。緊縛への徹底したコダワリが認められる作品は非常に読み応えがあり、数本混じっている軽快なラブコメが良い感じの息抜きになっていました。
タイトル通りに何の捻りも無いベタなラブコメな短編「ひねりもなんにもニャイ」や縛りの要素はあるもののそれすらコミカルタッチに描かれる短編「電波少女」を除いて、全作ガチの緊縛・拘束エロが描かれています。
とは言っても、エロシーンにおける強烈な攻撃性にも関わらず、穏やかなシナリオの作風はお馬鹿コメディが基本であり(←参照 お願いしますじゃないよ(笑) 短編「淳−2008初春−」より)、被虐欲を開花させられたヒロイン達は決して不幸になることはありません。シナリオ面で読者に抵抗感を抱かせず、同時にSMの倒錯のエロスを十二分に堪能できるように設計されているのは大変好印象です。
以前も書きましたが、拘束してのレイプとSMの緊縛プレイは行為こそ似ていますが、その本質は全く異なるものと考えています。
本作で(というか井上先生の作品群で)描かれる緊縛調教劇は、あくまで行為が望まれるSMとしての側面が色濃く出ています。
肢体の自由を奪い柔肌に喰い込む縄と一種論理的に畳み掛ける言葉による責めとによって解放される、秘めていた己の被虐欲の業の深さへの恐怖に、そしてそれすらも圧倒する超越的な歓喜に打ち震えるヒロインの表情は凄まじくエロチックです(←参照 自覚こそ最大の責め 「縛遼太郎(PN)の実践緊縛され講座」より)。そして、苦痛を快楽として認識させた後に、雪崩式に激しい責めで女体を倒錯的な性感に染め上げていくシーンの勢いの良さ、ゾクゾクする背徳感も印象的。
日常シーンも含め、構成力の高さを魅せ付ける官能小説的な練られたプロットが素晴らしかったです。
重要なファクターである“縛り”に関しては、言うまでもないことですが、素晴らしいコダワリを魅せてくれます。
時に縛り方の説明やその意味合いの解説まで盛り込み、エロ漫画の定番・亀甲縛り以外の様々な縛り方を登場させる上に(←参照 菱縄縛り 「緊縛温泉縄目の湯」より)、縛りに絡める責めやシチュエーションも非常に豊富で読み手を飽きさせません。この辺りは雑学(とポニーテール)大好きな井上先生の個性がエロに巧く融合していると言って良いでしょう。
縄に縛られる女体を美しく描き、束縛した肢体を蹂躙するエロシーンは展開の妙・勢いのある作劇によって高い質的水準を誇ると共に十分なボリューム感を持っています。
緊縛モノに必須であるポージング・構図にベテランらしい堅実さがあるのも◎。
己を解き放って初めて迎えた圧倒的な性感にイキ果てるヒロインの秘所へとドロリとした白濁液をたっぷり中出しなフィニッシュは1P丸々使って描かれています(←参照 「緊トレ」より)。痛々しいまでに尖る乳首やクリトリスの描写、ややエロシーンの場にそぐわない阿呆な台詞回しが人によってはマイナス評価と思いますが、勢いの良さによって帳消しにされているかなと個人的には思います。
既刊の単行本から続く作品に一定のケジメを付けた収録作や、マニアックな要素を緊縛という一ジャンルに絞ってきたことから現時点での井上よしひさ先生の集大成的な単行本と言っても良いでしょう。
確かなエロ漫画的技巧に支えられる倒錯のエロスがとても魅力的でした。お勧めです!
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