大朋めがね『SCHOOL GIRL』
『エム×ゼロ』最終10巻(叶恭弘/集英社)を読みました。ルーシー可愛いよルーシー。叶先生的には初期の構想通りに終われた様なので、ちょっと安心しましたが、やはり卒業まで描いて欲しかったなと思います。
さて本日は、大朋めがね先生の初単行本『SCHOOL GIRL』(フランス書院)のへたレビューです。テスト販売の恩恵に与れず、随分と後発なレビューになってしまいました。
少女漫画の色彩が濃い作風・絵柄が作り出すリリカルな雰囲気の中、登場人物達の善悪入り乱れる感情の機微を繊細に描き出す作品集です。
収録作は短編9作+フルカラーのプロローグ(4P)。プロローグと巻末作「あおいろ。」以外の短編間には明確なストーリーのつながりはありませんが、その舞台は共通しており、幾人かの登場人物はその姿や名前が他の短編においても出てきます。
大まかに言えば、大半の作品は登場人物達が高校在学時のもの、いくつかの作品は大学〜大学卒業後のものとなっており、順番こそ入り乱れますが作中での時間の経過をある程度感じさせます。
なお、1作当りのページ数は16〜24Pと標準的。一見サラリと読めてしまう類の漫画に思え、実際に雰囲気だけ何となく味わって読み飛ばすことはいくらでも可能ですが、細かい描写・台詞にまで登場人物の思いと作者の意図を込めた極上の味わい深さがあるため、実際の読み応えはかなりしっかりしています。
男女の互いの穏やかな恋心がセックスを介して割合と平和裏に結実する短編「不機嫌日和」などに見られる素直な作風もありますが、大半の作品は簡単にサブジャンルに区分出来ない、様々な思いが織り込まれた作風です。
一瞬の幸せな逢瀬を描きながらも、その幸せの終焉と不幸の始まりをラストで暗示する短編「CROSS BORDER」(←参照 穏やかな表情と絶望的なモノローグの対比)、ヒロイン達の偏執的と言ってよい歪んだ感情が生み出す狂気の交わりを描く短編「ヒステリック」「POP'N ROLL」、万引きをネタにその体を蹂躙される少女の心中に共依存という名の“恋”が生まれる短編「カーテン」など、作品ごとのシナリオと雰囲気は様々。肉体関係を当然絡めながら男女の情動を描き出すものの、彼ら彼女らのセックスは肉欲を満たすというよりは、抱える感情の抑えきれない発露であり、若さ故に刹那的なものです。
心のつながりを求めてその体を重ねる男女達ですが、今単行本の多くの短編で彼らの別離が明示・暗示されていることから分かるように、快楽的で激しく交わされる瑞々しい肉の交わりでさえ、登場人物たちをつなぎ止めることは出来ないのです。
最たる作品は短編「そらいろ。」ですが、恋やセックスという分かり易いカテゴライズ・行為が出来るのにも関わらず、それと同時に人は完全に分かり合うことは出来ないというもどかしさ・寂寥感が色濃く出ています。
各コマの描き込みを敢えて押さえた透明感のある作画、状況説明としての役割を排したダイアローグ・モノローグは(←参照 空隙の独特の心地よさ 短編「そらいろ。」より)、読み手に登場人物達の心情を読み解くのに最小限の取っ掛かりしか与えてくれません。だからこそ読み手はじっくりと作品を味わうことも出来ますし、作品にほんのりと漂う寂しさや狂気を感覚的に味わいながらサラサラと読み進めることも出来ます。
ただ、個人的にはさほど多くないページ数内でよく練られた構成や、ちょっとした表情の変化や所作が雄弁に伝える登場人物の心情を丁寧に味わって頂きたい作品だと思っています。
絵柄的には繊細で優しいペンタッチで描かれる少女漫画風の絵柄。時々見せるキュートでコミカルな表情(←参照 短編「SCHOOL GIRL」より)や乙女チックに華やかなトーンワークはいかにも女流らしいです。ヒロインの年齢層はハイティーン〜成人女性ですが、基本的には女子高生がメイン。セックスアピールは抑え気味なボディ・デザインであり、体の等身や胸・お尻のサイズは現実的なものです。
なお、男性も含め登場人物のメガネ着用率はかなり高いです。メガネヒロインそのものがお好きな方には好アピールですが、まかり間違っても眼鏡にぶっかけ〜みたいなエロへの活用は皆無なことには一応注意されたし。
エロに関しても決して“綺麗な”セックスをアッサリと描くだけに終わっておらず、登場人物の思いをぶつけ合うかのようなセックスの力強さが表現されています。
荒く書かれた擬音をふんだんに散りばめた抽挿シーン(←参照 短編「CROSS BORDER」より)には十分勢いがありますし、紅潮した表情がエロチックなヒロインが性感を昇りつめ、その膣内に中出しなフィニッシュには一定の力強さがあります。ことさら性器結合に力点を置いていませんが、性器描写もある程度丁寧なものであり、引きのコマで絵柄がやや雑な印象があること以外はマイナス要因はあまりありません。
とは言え、各短編のセックスは登場人物の心情の描出とかれらの迎える別離へのプロローグのためのものであり、気軽に抜くにはかなり向いていない印象はあります。
なお、短編「ヒステリック」は結構ガチな凌辱劇+後味の悪いラストなので、苦手な人は注意して下さい。
ハッピーよりな作品にしても、愛憎渦巻く暗い雰囲気の作品にしても、とにかくラスト数ページが作り出す趣のある余韻が素晴らしく、読後の満足感は大変強いです。
綺麗な絵柄が魅力なので抜き物件としても必ずしも悪くはないですが、もっと気軽にガンガン使える作品が数多くあるのは事実。
木村屋いづみ先生とかが好きな貴兄には結構お勧めですよ!
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