柚木N'『姉❤コントロール』
板垣恵介先生&RIN先生の『どげせん』最終第3巻(日本文芸社)を読みました。作中の人物も読み手も、瀬戸先生が土下座することは分かり切った状態で如何にインパクトを生むかが図られた最終巻だったという印象です。瀬戸先生が路上で女性下着姿を曝け出すシーンには笑うというより、むしろビビりました。これまた無駄に壮大なラストでしたが、これくらいの分量で調度良い作品でしたね。
さて本日は、柚木N'先生の『姉❤コントロール』(ティーアイネット)のへたレビューです。なお、先生の前単行本『アナザー・ワールド』(同社刊)のへたレビュー等もよろしければ併せてご参照下さい。
練られたストーリーテリングとお姉ちゃんがトロトロに蕩ける濃厚エロとが見事な融合を果たす1冊となっています。
収録作は、ひそかに恋心を寄せる姉が好きな男子に告白するということを聞いてしまった弟が、かつて姉が催眠術に容易くかかってしまったことを思い出し、禁断の手段に頼って始まる催眠洗脳劇なタイトル長編「姉❤コントロール」全6話(←参照 戻れぬ道へと踏み入る弟 同長編第1話ラストより)+幕間劇な描き下ろし番外編8P、および読み切り短編2作。描き下ろし短編は除き、1話・作当りのページ数は20~32P(平均26P強)と中の上クラスのボリュームとなっています。短編群はコンパクトにまとめつつ、長編作は読み応えのある作りであり、共にエロの体感的なボリューム感は強めに仕上がっています。
【ハイティーン級の巨乳お姉ちゃんヒロイン】
短編「××から始まる恋もある。」は幼馴染の少年小少女による嬉し恥ずかし青春ラブエロストーリーですが、姉弟相姦エロを得意とする作家さんであって、長編作と短編「姉にマタタビ」では主人公の実の姉が登場。
20代前半程度と思しき短編「姉にマタタビ」のワガママお姉さんに対し、他のヒロインは女子高生さん。なお、程度の差こそあれ、主人公のことを大切に思っていることは共通しています。
ツンデレや委員長タイプ等、明確なキャラ付けをするスタイルではあまりないですが、主人公のことを振り回すエロお姉ちゃん(短編「姉にマタタビ」)、正統派の幼馴染である女の子(短編「××から始まる恋もある。」)、そして優しく活動的な姉(長編「姉❤コントロール」)と、比較的分かりやすいキャラ設計であり、その分シナリオの軽快さ、もしくは重厚さが引き立ちやすいと言えます。
ヒロイン達のボディデザインに関しては、女性らしいふっくらとした体幹にもちもちと柔らかい巨乳&桃尻を備えるタイプであり、程良い陰影で重みを付けたり、エロシーンでは汗や涎を添加してシズル感を高めたりすることで肢体そのもののエロティックさを十分に喚起しています(←参照 “むにゅう”と柔らかく変形する乳房 短編「××から始まる恋もある。」より)。絵柄的には女流作家らしい清潔感・キャッチーネスを感じさせつつ、ネオ劇画的な濃さも少々感じさせており、細めに描線を引きながら、いい意味での荒れが猥雑感を引き立てたりと、独特なバランス感覚で整えられたタイプ。ただし、読み手の嗜好によってはクセの強さと映る可能性はあります。
十分なキャリアを積み重ねてきており、前述した粗さによる勢いやストレートなエロさを含ませつつも絵柄そのものは単行本通して安定していると評することができ、デジタル彩色で整えられた表紙絵との齟齬も小さく収められています。
【陶酔感の強さを支える的確なエロ作画・エロ演出】
短編群と長編作は共に恋愛エッチの形式と取りつつも、前者が登場人物達の自発的な意志と恋愛感情によってセックスが営まれるのに対し、後者は催眠術による洗脳によって恋愛セックスを“強要”するという点において全く雰囲気が異なっています。
短編2作では、幼馴染と姉弟で関係性は異なるものの、既存の関係性を打破することで双方が幸福と、それに基づく快楽を得るという非常にポジティブな雰囲気を持っており、恋愛系のエロ描写における甘酸っぱさや幸福感、高揚感などによってエロの盛り上げを図っています。
これに対して、長編作においては本来手を出してはいけない対象を、自分の支配下に置き、望む行為を共用できるという状況が強い嗜虐性を持っており、ヒロインが愛の言葉を語ることそのものが読み手と主人公である弟君の征服欲を強く刺激する作りとなっています(←参照 長編「姉❤コントロール」第2話より)。長編作においては、ストーリー進行の都合からエロシーンを分割構成するケースも散見されるものの、前述した肢体そのもの官能性の強さと、躍動的な肢体の動きの描写、涙や涎で濡れた蕩け顔、ハートマーク付きのエロ台詞といったエロ演出が有機的に噛み合うことでエロ描写としてのアタックの強さを保つのは長編・短編に共通する魅力。
エロシーンの尺に余裕があることもあって、“自発的”なご奉仕フェラやヒロインの柔らかボディの愛撫といった描写で構築される前戯パートに十分な分量を設けており、ここで1回目の射精シーンを投入。特に口戯のシーンでは前述したねっとりとした液汁描写が良く生きているのも官能性を高めています。
すっかり愛液で濡れそぼった蜜壺にち○こを挿入すれば、強烈な性的快感にヒロインの肢体は戦慄き、肉棒を締めつけることで1Pフルの中出しフィニッシュへとご案内。この際、作画・演出面も明確に強化されており、白濁液が注ぎ込まれる結合部を見せ付ける構図を描き文字のエロ台詞と大きく表示される擬音でガッツリ感(造語)を生んでいます。
【催眠術というエロ漫画的便利ツールがもたらす明と暗】
エロ漫画作品において、催眠術というギミックはエロへの進展を滑らかにするという点で非常に便利なツールであり、しばしば使われるわけですが、その利便性を全面的に肯定するのか、否定するのかは作品によって異なります。
長編「姉❤コントロール」は、催眠術の有効性を存分に生かしつつ、その歪んだ手段の功と罪を共に描くことによって、作品に深みを与えており、“手段”に捕らわれしまう人間の悲哀と苦しみと喜悦を含ませています。
弟のモノローグを中心として作品を語らせており、感情描写が読書感のヘビィネスをしっかり形成。また、弟が完全な“悪役”ではなく、姉への叶わぬ恋の苦しみと姉を奪われるかもしれない相手への嫉妬が彼を駆り立て、一度得てしまった幸福を失ってしまう恐怖と自分の歪みに気付きながらの自己欺瞞に捕らわれながら洗脳調教をエスカレートしていく様子には何とも言えない息苦しさがあります。
例え、それを自覚していようとも歪んだ行為であることは間違いなく、繰り返される恋愛感情の強制的な植え付けは、愛する姉の心を壊し、弟の望んだハズの幸福から大きく逸脱した事態を生み出します(←参照 洗脳されても意識に残る“先輩”を無くす方法 長編「姉❤コントロール」最終話より)。非道に落ちても得ようとしたものが得られないという悲哀は、近親相姦を描く本作の重要なテーマの一つでもあるでしょう。ラストシーンは敢えて伏せますが、一転してハッピーエンドへ向かって舵を切りなおす様で、実は救いのないそのラストは、悪役への因果応報的な爽快さもなく、また明確なバットエンドやハッピーエンドによるインパクトの強さもありません。
エロのエスカレーションと独占の喜びをしっかりと打ち出しつつ、そこで溜まり続けた歪みをラストで噴出させる鮮烈な構成の巧さ、全編通して幸福と苦しみが同居する繊細さ、そして催眠術という便利ツールの明暗を共に練り込んだシナリオは非常に魅力的であり、このジャンルとして一つの金字塔を打ち立てたと評したいところ。
10冊目という点でも今単行本はこの作家さんのキャリアにおいて記念すべきものでありますが、それ以上に作劇の巧さ・実用性の高さが作家としての成長を如実に示したという意味でも大きな価値を持つ1冊と評したいところ。
この作家さんの初期作に対して、僕は結構辛い評価を書いていたのですが、当時の僕に伸びしろを見る目が無かったのだなぁとつくづく感じます。個人的には激賞に値する1冊であり勿論、お勧め!
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