MARUTA『キミの好きな女の子のカタチ』
シリアスで難解な作品に出会った時、それを如何に咀嚼してレビューの内容に含めていくかというのは僕の力量では大変難しいです。今回はきちんと理解できているのかかなり不安です。”理解”する必要があるかというと必ずしもないとは思いますが。
とまぁ、相変わらずの弱音吐きでしたが、今回はMARUTA先生の『キミの好きな女の子のカタチ』(富士美出版)のへたレビューです。
郷愁を誘う夏の風景を印象的な背景として用い、若い男女の瑞々しい性愛を描く作品集でした。
収録作は、AVに出演したという噂を流された女子生徒(←参照 前編より)とその幼馴染の男子生徒、男子生徒に思いを寄せるもう一人の女子生徒の3人の恋模様を描く「八月の一番暑い日」前後編、数十年の時を少女の姿のまま”花売り”として男の精を貪る女性の物語「椿」全4話、他短編3作と描き下ろしおまけ漫画1作となっています。1作当りのページ数は16〜22Pで平均19P強。短編作品は読み応えに欠けますが、続きものでのシナリオの厚みは十分。また、風景や人物を印象的に描くコマが頻出し、その魅力のおかげで読後の満足感は高いです。
短編「ボクの好きなお尻のカタチ」を除けば、全作品の舞台は夏の田舎です。各作品において、田畑や神社、昔懐かしい日本家屋などノスタルジックな日本の原風景が丁寧に背景として描き込まれています。
蝉の鳴き声が絶えず響き、草木が青々と茂る背景(←参照 ここで引きの構図を使えるセンスは素晴らしいの一言 「八月の一番暑い日」前編より)は、夏特有の力強い生命感に満ちています。夏の季節に淡い恋心から交わる少年少女たちの姿もまた瑞々しく、共に性の快楽を享受する様には若さゆえの輝きがあります。彼らの交合は”健全”ではないのかもしれませんが、少なくとも”健康”ではあります。
恋愛感情と性欲が綯い交ぜになった「生き生きとした性のカタチ」がそこには確固として存在します。
しかしながら、賑やかな夏の日がヒグラシの悲しげな鳴き声響く夕焼けと共に終わるように、夏の季節が寂しい秋へと移ろいゆくように、その眩しい性もまた変化を余儀なくされます。
「八月の一番暑い日」のラストは、共に男子生徒と力強いセックスを経験しながら、片方の少女の心の変化ともう片方の少女の失恋が描かれます。誤解を恐れずに書かせて頂くならば、彼ら彼女らの「生き生きとした性のカタチ」の全能性は否定されます。
それが最も強くテーマとして感じられるのが中編「椿」です。快楽に満ちたセックスで交わった男の心を狂わせる少女が登場します(←参照 「椿‐2006−」より)。何十年と少女の姿で男を貪ってきたヒロインの所業・因果を現在から過去へと遡り、そしてまた現在に戻って描く構成力が光る作品でした。シナリオ展開や人物関係の説明を(おそらく意図的に)かなり省略しているため、ある程度の読解力を要求し、読み手によって様々な解釈がありえる作品だと思います。
僕個人の解釈を長々と述べるつもりはなく、是非読んで貴殿なりの解釈をしていただきたいですが、敢えて短く言うなら「生殖としての性の不在(の不幸)」がテーマかなと感じました。
「椿」のラストにおいて、花の咲かなった椿の木に2輪の椿の花が咲いて終わります(←参照 紅白二輪 「椿‐夏‐」より)。”花”は作中でのキーフレーズですが、花は美しいものであり植物の命の輝きの象徴です。しかし同時にそれは植物の生殖器官でもあるわけです。多くのエロ漫画において例え「生き生きとした性のカタチ」を描きながらも省かれることの多い、セックスの生殖としての側面の重要性を逆説的に示している作品と僕は感じました。
リアル志向の絵柄で描かれる少女たちはナイスボディとは程遠い地味な体型の持ち主。性器描写もリアル志向ですが、性器の結合を見せつけてエロさを作り出すタイプではないので直接的な煽情性を期待するのは避けた方がよいでしょう。
エロシーンのテンションは情感的ながら低く抑えられており、淫らさという点では結構評価できるのですが、実用性が高いとは言い難いのは確かです。
表紙絵の明るい印象と内容の雰囲気はかなり違いますので注意されたし。気軽にオナヌーに使える類のエロ漫画ではないのですが、多少のファンタジックな要素が許容できて重めのシナリオが好きな方にはお勧めできると個人的には思っています。
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