唐辛子ひでゆ『七色唐辛子』
「とらドラ!」は面白いですなぁ。底抜けに明るい太陽みたいなみのりんも○ですが、やっぱり大河可愛いよ大河。原作未読なので今後どうなるのかさっぱりですが、主人公とヒロインが恋愛感情とはまた別の信頼関係を構築するのは面白いなぁと。
さて本日は、唐辛子ひでゆ先生の初単行本『七色唐辛子』(ヒット出版社)のへたレビューです。一見和風の美しい表紙と見せかけて、よく見るととんでもないことになっています(笑。
表紙の通りの大バカエロコメディと少年少女の心温まる純愛ストーリーの両方が楽しめる作品集です。
収録作は全て短編で8作。これに描き下ろしの掌編作「ほっかほか金時」(4P)が付いてきます。
1作当りのページ数は18〜32P(平均24P弱)と中の上クラスのボリューム。ギャグ系では漫画展開の緩急がページ数に見合っておらずやや間延びしている感はありますが、ラブストーリーでは温かい雰囲気を落ち着いて味わえる構成になっています。
高嶺の花な学芸員のお姉さんが展示物の彫像を使ってオナニーをしているを発見し、自分がそれに成り代わって〜という「身代わりセックス作戦」(原文ママ ←参照)が敢行される短編「キミはたくましい像」で始まる今単行本は、短編2作を除いてお馬鹿なエロコメディ。人物関係が幼馴染だったり姉弟だったりしますが、恋愛要素は非常に希薄であり、男女の初々しい恋愛模様を期待するのはNG。
来るべき女性上位社会のためにオマタを鍛える(原文ママ)女生徒たちを描く短編「お股の教室」や、惑星探査で遭遇した未知のウイルスに抗体を持つ男性を巡って女3人の素敵に浅ましい争奪戦が楽しめる短編「Fuck or Die」のように、「幼馴染の関係?初恋の相手?そんなのエロの前には些細なことよ!」と微塵の後ろ暗さもなく駆け抜けるコメディです。
大好きな先輩(変人)にアタックしたら体で生け花をされちゃって(表紙絵参照)な短編「錦上添花」も含め、コメディにおける設定のアイディア力はしっかりあるのですが、序盤でガツンとぶつけた奇抜なアイディアで生じたテンションがずるずる低下していくような構成は折角のギャグの活きの良さを殺している感があり、ちょっと残念。個々のページ数は十分な分、オチを含め中〜終盤でのもう一捻りを加えて頂けるとより楽しめると個人的には思います。
これに対し、少年の真っ直ぐな恋心と熱意が少女の強さの中に隠れた弱い心を救い出す恋愛ドラマ短編「節切の丘」「あなたに免許皆伝」は共にベタ気味ではあるものの、プロットがしっかり構築されており、なかなか力強い恋愛ドラマを魅せてくれます。
特に短編「節切の丘」(←参照)は、苦しみの生から逃れんと崖から“飛び降り”て命を絶とうとする籠の鳥の少女を、浪漫を追いかけ自作の飛行機で“飛び立とう”とする少年が救うという練られた設定、少女の明るさが少年の熱意を励まし、その熱意によって少女もまた救われるという心温める展開が共に非常に巧く、ドラマチックなフィナーレを素直に祝福させてくれる力強さがあります。短編「あなたに免許皆伝」の落下した先代の扁額、短編「節切の丘」の外れた首輪など、サラッと描かれた小道具がしっかりと少年少女への祝福を伝える仕掛けになっているのも漫画表現として非常に上手でかつ好印象。
おまけに描き下ろされた掌編作「ほっかほか金時」が、その名の通りに焼き芋の如く優しい甘さと暖かさを持つラブ話であるように、エロコメよりも恋愛劇を描くことがお得意なのでは?
と考えています。勿論、コメディも読ませて頂きたいですが、次の単行本では少年少女の伸びやかな恋愛劇の分量を増やして頂くと嬉しいなという感想です。
丸みの強い柔らかい描線を多用する絵柄は現代的な萌え絵柄でクセやアクはほとんど無く、万人向けといってよいタイプ。ミドル〜ハイティーン中心のヒロインさん達を可愛らしく描けています(←参照 ヒロイン3名の豪華さ 短編「Fuck or Die」より)。作品間で絵柄のブレはほとんどありませんが、表紙絵は彩色がかなり良いため中身よりも相当魅力が高まっているので、出来ることならパラ見可能な本屋さんで購入を検討することをお勧めします。
なお、所謂“作画が抜けている”コマが散見され、それはそれで味になったりするのですが、特にコメディ作品でギャグ展開の要所となるべきコマで描画が荒くなっているのは個人的にはマイナス評価。まぁ、この辺りは好みにも依るので何とも言えませんが。
十分なページ数があることもあってエロシーンの分量はしっかり確保されており、コメディ作の快楽優先主義なエッチもラブストーリー短編における純愛エッチもどちらも楽しめます。
前の穴にキノコを生けられたヒロインの姿がふたなり少女みたいで面白い短編「錦上添花」(←参照)のように、緊縛とかおしっことか近親とかアブノーマルな要素も絡めてきますが、倒錯性というよりは面白さの演出であり、変態チックを楽しみたい方には物足りないかも。むしろ特に純愛エッチで顕著な、裸になった男女が互いの肌を重ね合わせ、互いへの想いまたは真っ直ぐなエロへの願望を重ね合わせる様が意外に温かく読み手の煩悩を刺激してきます。
抽挿シーンを長めに取ってあるエロシーンの構成もこの印象を強めており、エロの温度感を重視する方には結構な好物件、エロの激しさ・派手さを求める方にはやや弱含みな作品という感じです。
年齢関係なくツルツルなお股ですが、性器表現の水準は高くなく、淫靡に照らつく媚肉を眺めたい貴兄は回避推奨。なお、アナルセックスは2作あり、短編「錦上添花」は初エッチでアナルオンリーという構成ですので、前穴中出し至上主義な貴兄はよく検討をされたし。
袴に代表されるような日本情緒や宇宙探検や飛行機といった航空宇宙関係など、唐辛子先生ご自身が好きなものをしっかり作品に盛り込めていること自体が非常に好印象でした。
これらの要素とコメディやエロを上手く結び付けていく手法を磨く場としてコミック阿吽は好適な場だと思うので、次回作を今からとっても楽しみにしております。
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