舞登志郎『よい子は静かに眠れない』
記憶にしっかり残るエロ漫画の名作達にも色々なタイプがありますが、読んだ後にじっくりと考察させてくれる作品は特に心に残るものです。今日紹介する作品は余計なことを沢山考えていたせいで、ちょっとレビューが遅れてしまいました。でも、この作品に会えて幸せです。
というわけで、舞登志郎先生の『よい子は静かに眠れない』(モエールパブリッシング)のへたレビューです。
終始優しいポエティックな雰囲気に包まれながらも、父と娘の近親相姦が持つ禁忌としての側面および両者の感情にしっかりと踏み込み、それらを介して“家族の在り様”に鋭く切り込んだ作品と個人的には見受けました。
収録作は、(おそらくかなり前の)離婚の結果、普段は離ればなれになり時々しか会えない父と娘(←参照 第2話「せめて夢だけは」より)が、実は二人が共通して見ている淫夢の中で逢瀬を重ね、それぞれの感情を鬱積させてゆく長編「夢」シリーズ全7話+後日談のおまけ短編1作、および短編1作「妹さっきゅばす」となっています。おまけ短編(6P)を除いて1作当りのページ数は全て20Pです。非常に口当たりの柔らかい作風・絵柄ですが、読み手を惹き付ける展開の妙とキャラクターの立て方の良さ、アナルに特化した濃いプレイ内容故に読み応えは相応に強い印象があります。
長編の「夢」シリーズは、確固として“家族”である父と娘の近親相姦であると共に、娘が幼少時より二人が別離の状況下にあったことは二人の間の家族関係が希釈されていたことを意味し、同時に“他者”同士の恋愛物語の側面を持ちます。
これはあくまで個人的な本作品の解釈なのですが、父の娘に対する感情と娘の父に対する感情は、“家族愛”と“他者間の愛(恋愛感情)”との比率という点で大きく異なっています。
二人が実は共に同じ夢を見、そこで繰り広げる性行為を互いを欲していたことに第4話ラストで気づいても、その断絶はおそらく埋まらなかったと思うのです。
娘の父に対する愛情は、あくまで“家族”としての愛の延長線上にあります(←参照 最も象徴的な台詞 第5話「夢から逃げられない」より)。子供にとって、例え別居の環境下にあろうが、血縁関係・家族関係は生得的に既与のものであり非常に強固です。“家族”という集団の“同一性”の象徴は子供なのではないかと僕は思うのです。しかしながら、本作における父の娘に対する愛情は、性欲としての側面が強いということに以上に、“他者”に対する愛情の側面がより強いことが決定的に両者を分かつと考えます。
“父親”にとって“母親(妻)”は元々“他者”であると同時に、お腹を痛めて産む“母親”より“子供”への血縁意識は低いと言われます。(なお、“他者”である前提を踏まえながらも家族が維持されるからこそ家族愛は素晴らしいということを書き添えておきます。)
父の“他者”への愛情・性欲が娘に向いた時、それは“家族”という存在が密かに内包する“他者性”を浮き彫りにします。そのことは“家族”という非常に尊い存在を支える基盤への許されない挑戦です。
作中において、実は二人が共有する淫夢が父親が見ている夢だと判明した時、父親の暗い欲望が暴走し、異形の触手が登場し娘を嬲ります(←参照 第5話「夢から逃げられない」より)。その姿は醜悪で、そして父親自身にも止められません。非常に興味深いのは、この化け物は父親によって退治されるのでなく、父親の娘への正直な気持ちの告白とそれへの娘の受容を励まし、自ら消えて行きます。
残酷な物言いをすれば、父と娘のそれぞれに対する愛情の差異は解消していません。さらに最終話、夢の中ではなく現実において性交を果たした二人は、そのことが母親に露見して会うことを禁止されてしまいます。
父娘相姦を描く作品において、母親不在というケースも多いのですが、本作では母親(これが竹を割ったような性格の素晴らしく魅力的な大人の女性なのですが)は、彼らの(例え離婚していようが)家族としての絆を守る最後の砦たる重要な存在です。
それまでのドラマの運び方が非常に巧かった割に、終盤の展開のグダグダ感に不満があり、結局どちらの感情を重視すべきだったか、それと“家族”との関係が如何なるものなのかということを上手くまとめられていないのはちょっと残念です。
しかし、それでも僕はこの結末によって、父と娘二人の愛情の種の差異が存在し、その差異すらも内に包み込んでしまうからこそ家族の“同一性”は守られたと解釈しています。
以上の考察はあくまで僕個人のものです。多くの方が自分で読み解き、様々な解釈を行うに十二分に足る作品だと僕は信奉しています。
絵柄は萌えとか艶とかからは程遠いタイプですが、その繊細で柔らかいタッチは、駄目人間だが優しい父親とそんな父親が大好きなとても可愛らしい娘さんを優しく描き上げています。
特に娘さんのキャラクター造形は非常にキュートであり、いじましいまでに良い子な台詞とか、漫画チックに魅せる表情変化などが大変愛くるしい子です。
娘さんはほっそりとした手足に貧乳寸胴体型という、如何にもなロリ体型(設定的には中○生)ですので、スレンダー巨乳美少女とアッハンウッフンな作品をお求めの方は回れ右で。
エロシーンにおいては少女の表情や台詞が背徳感を煽りますが、描写自体が濃厚という訳では決してなく分量的な問題もあってかならずしもロリエロ漫画としての実用性が高いとは言い難いです。
「夢」シリーズは徹底して後ろの穴しか使わないというエロ展開になっていますので、アピールできる層が広いとも言えないのも事実。
なお、コスプレ要素が強いのですが、体操着はともかくとして割烹着とかドテラとか(←参照 第4話「夢が夢でなくなるとき」より)実に野暮ったい衣装が多め。メイド服とか、もうちょっと分かり易い味付けがあってもいいと思うのですが、何処か幼き日々への郷愁を抱かせるそれらの服を着た少女の痴態は、少女と共にその郷愁のイメージすら汚すサディスティックな喜びがあると思うのは僕だけでしょうか。今作においてエロシーンは絶対に必要なのですが、抜きにはちょっと使いづらいとうのが正直な感想です、いやまぁ、僕は使いましたけど(笑。
ここ数日、今単行本についてかようなことを延々と考え続けたせいで、かなりレビューが長くなってしまいました(汗。
エロにしてもテーマにしてもマニアックな側面が強いことは重々承知していますが、それでも多くのエロ漫画好きに是非読んで欲しい作品だと僕は思います。
キャラ良し、(最終話以外)シナリオ良しで、思索の時間も含めて読後の余韻が素晴らしい作品ですよ!
| HOME |



